もう一つの視点

真理は少数から始まる

「他人事」を装うテレビ局体質

 近年、SNS上でのフェイクニュースや特定の個人に対する誹謗中傷が、社会の深刻な脅威である。中でも、公的な影響力を持つNHK党の立花党首(当時)が、裏付けのない情報や悪意のある中傷を意図的に発信したことは、社会における正義と秩序を破壊する行為である。立花氏が名誉毀損の疑いで逮捕されるという事態は、言葉の暴力に対する司法の明確な判断を示している。

 しかし、看過できないのは、この悪質な情報を社会へ拡散させたのが、高い影響力を持つテレビ局による情報番組や報道番組、ニュースであったという事実である。問題の偽情報や中傷は、単なるSNSの一過性の炎上としてではなく、テレビ局が街頭演説やインタビューという公的な「報道」の形式を借りて繰り返し、広く、深く社会に浸透させた。その結果、偽情報に基づく個人への誹謗中傷は加速度的に増加し、痛ましいことに最悪の結末に至らしめたのだ。

 特定の政治家によるSNSでの偽情報発信は重大な問題である一方、その情報を繰り返し放送し、社会的な影響力を増幅させたテレビなどのマスメディアの無責任な拡散行為こそが、事態を悪化させ、最終的に人命に関わる悲劇を招いた主因の一つであり、その責任は極めて重い。

 現在、多くのテレビ局や報道機関は、この悲劇的な事実をあたかも遠い出来事のように、ニュースや報道番組で伝えている。これは、自分たちがその「加害者」の中心的役割を担い、事態を深刻化させた張本人であるという、都合の悪い事実から目を背ける行為に他ならない。

 この無責任な姿勢は、過去の重大な問題、例えばジャニーズ事務所の性加害問題への対応にも通じる、マスメディアが抱える構造的な病弊を浮き彫りにしている。彼らは、問題の当事者として深く関与し、あるいは長年にわたりその事実を黙認・看過してきたにもかかわらず、ひとたび社会的な非難が高まり、悪が法的に追及されると、突如として公正な第三者の仮面を被り、相手を激しく非難し、無関係を装う。影響力の大きいマスメディアが、自らの過去の行為を顧みず、都合よく立場を変えるこの自己保身と無責任の連鎖は、社会の信頼を蝕むものである。

 マスメディアは、単なる情報の伝達者ではなく、世論を形成し、個人の人権と尊厳を守る「社会の公器」としての重大な使命を負う。彼らは、自らが拡散した情報によって生じた悲劇に対し、真摯に猛省し、徹底的な検証を行うべきだ。「他人事」として報じるのではなく、自らの関与を明確に認め、再発防止に向けた具体的な行動を示すことこそが、メディアに課せられた喫緊の責務である。マスメディアがそのおぞましい無責任体質を改めない限り、情報の洪水の中で、社会の公正さと倫理観は守られないだろう。