トランプ大統領が提示するロシア・ウクライナ間の和平案が、国際社会から強い非難を浴びている。その内容は、ロシアが一般市民を殺害し、都市を破壊したうえで不法に占領した領土について、ウクライナ側にロシアへの譲渡を迫るというものだ。
外交専門家の間では、トランプ氏のこの姿勢は、武力侵略の結果を既成事実として追認する行為であり、事実上ロシアの立場に立っているとの見方が支配的である。
「これは仲介ではなく、一方的に攻撃された側に降伏を求めるに等しい」「トランプ氏はロシアの要求を世界に伝える“広報担当者”に成り下がっている」といった批判も聞かれる。国際法と正義を軽視し、力による現状変更を容認する姿勢は、国際秩序そのものを揺るがしかねない。
これを既成事実化すれば、中国も勢いづく。同じ方法で領土を拡大していけることを認知するからだ。ロシアが一般市民をミサイルで殺し、街を破壊しながら武力によって領土を拡大する行為、関税を脅しに相手国に言うことを聞かせる行為―そうした振る舞いが通用するのであれば、国際社会は「やったもの勝ち」の現実を受け入れたことになる。
核で脅せばトランプ氏は譲歩する―そうした認識が広まったこと自体が、すでに深刻な問題である。やがてトランプ氏は、制御不能となった中国とロシアを残して政界から去るだろう。だが、壊された国際秩序は元には戻らない。彼を大統領に選んだアメリカ国民は、この帰結について、どこまで考えているのだろうか。