書店に行ったら、目立つところに小学生向けの本が並べられていた。小学生はちょうど冬休みに入った頃だ。読書の機会が増えるので、置かれたのだろうか。
目に飛び込んできたのは、表紙に描かれたユニークな表情のおじいさんの絵だった。「さんねん峠」という本である。そこで転ぶと3年しか生きられないという坂道でおじいさんが転んでしまうという話である。明るく楽しいお話である。この話は、韓国の民話をもとに、リクムオギさんが書いた作品だ。
この表紙を見るたびに、数十年前のことを思い出す。翌日の講演のために来られた彼女を駅まで迎えに行き、街の観光地を車で案内したことがあった。本の印象から、活発で面白い方かと思っていたが、実際にお会いしてみると、とても上品で物静かな方だった。車内でいろいろと話を伺ったが、苦労も多かったという。だからこそ、人を前向きにし、元気を与える物語が生まれたのかもしれない。「人は悲しみが多いほど、人には優しくなれるのだから~♪」という歌の一節が思い出される。
苦労も貧困も悲しみも事故による障害も、全て避けたいことではあるが、それらを経験してきた人の言葉や生き方には深みがある。プラスに生かして実践していく力がある。
人は、経験を重ねることで、言葉や生き方に深みが増していくのだろう。何事もなく平々凡々と暮らしているだけでは、本物にはなれないのかもしれない。