もう一つの視点

真理は少数から始まる

「試合を楽しみたい」は敗北への一歩

 女子卓球や女子バレーなど、日本代表のスポーツ選手が「明日の試合は楽しみたい」と笑顔で語る場面をよく目にする。

 しかし、このセリフを口にして勝利した選手を、少なくとも私は一度も見たことがない。この言葉を発した選手やチームは、終始相手のペースに飲まれ、単純ミスや自爆を繰り返して実力さえ出せないまま、惨敗を喫するのが常である。

 金メダルを狙うトップアスリートは、試合前に「楽しみたい」などとふざけたことは決して口にしない。極限まで集中し、真剣に勝負と向き合っているからだ。

 そもそも「楽しみたい」という心構えでは、勝負に勝てるはずがない。それは、集中力や平常心、闘争心から逃げているあらわれである。不安を隠すためのハッタリにすぎず、その心の奥底には「負けて早く楽になりたい」という本音さえ透けて見える。

 そんな歪んだ意識で試合に臨めば、無理に楽しもうと焦って心身がバラバラになるのは必然だ。「楽しまなければ」という強迫観念が体をますます硬直させ、自らパフォーマンスを低下させるという悪循環に陥る。

 国を代表して戦う以上、選手は「楽しむ」といったおかしな言い方や考え方を捨てなければならない。そうしないと、いつまでたっても優勝に手は届かないだろう。緻密な分析と作戦に基づき、120%の真剣さで練習に取り組み、150%の集中力と沈着な闘志を持って試合に臨むことは、国を代表する選手の最低限の責任である。