もう一つの視点

真理は少数から始まる

神格化される安倍政治の真実

 自民党は安倍氏の国葬を断行したり、神社内に顕彰碑を建てて彼のマフラーなどをご神体として奉納する式に出席したりするなど、未だに彼を「神」のごとくあがめている。だが、彼が遺した負の遺産に目を向ければ、その評価は180度変わる。

 まず、彼が好んだ「地球儀を俯瞰する外交」の実態である。プーチン大統領と27回もの首脳会談を重ね、親密さをアピールしながら、結果はどうだったか。北方領土問題は進展するどころか、事実上の「2島返還」へと後退させられた。プーチンの掌の上で転がされていただけである。それだけではない。中国とは尖閣諸島を巡る対立を深め、韓国とは慰安婦問題や輸出管理を巡って「戦後最悪」と言われるまでに関係を悪化させた。近隣諸国との外交をことごとく停滞・退行させた彼の外交能力が、果たして高いと言えるだろうか。

 国内に目を向ければ、森友・加計学園問題において、不都合な公文書の改ざんや廃棄が平然と行われる事態を招いた。直接トップの命があったかは不明だが、周囲が過剰な忖度に走り、不適切で透明性を欠く「独善的な政治手法」を定着させた責任は免れない。そもそも、恐怖政治にも似た、他者に忖度を強いる風土を築き上げたこと自体が根深い問題である。また、旧統一教会は安倍氏が登場する以前から日本に深く入り込み、多くの犠牲者を出してきた組織である。安倍氏は政治家としてその存在に目をかけ、ビデオメッセージを通じてお墨付きを与えることで、深刻な闇を後押ししてきた。その罪は極めて重い。首相在任中、数々の不適切な問題が露呈しながらも、彼は詭弁と強引さで押し切り続けた。その政治姿勢は、極めて不健全であった。

 そして、何より深刻なのは、身勝手な論理で世界の秩序を壊し続けている「化け物」とも言えるトランプ氏の政治スタイルの基礎を、安倍氏が作ったのではないかという点である。トランプ氏が安倍氏を異常なまでに尊敬し、心を許していたのは、単なる人柄によるものではないだろう。彼のような性格の政治家は他にも多く存在するからだ。安倍氏が自ら、メディアへの攻撃的な対応や、反対を押し切る強引な政治手法の重要性をトランプ氏に進言し、指南したからではないかと私には思えてならない。トランプ氏が法や慣習を軽視し、独善的に振る舞う現在の姿は、まさに日本で安倍氏が確立した「強気で強引にやり通す」成功例をなぞっているに過ぎない。安倍氏という先駆者との出会いがなければ、トランプ氏はここまで独善的な願望を達成し続け、結果的に民主主義を壊す方向へ進むことはなかったのではないだろうか。

 社会の闇を深めた側が、検証も反省もなされないまま未だに聖域化されている今の状況は、果たして健全と言えるだろうか。私たちは、作られた偶像に惑わされることなく、安倍政権が遺した「罪」の側面を客観的に検証し直すべきである。自民党議員が言うように、安倍氏の功罪について「歴史の判断」を待っていては、現在歩むべき道を踏み間違えることになる。